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花火~石の隠者番外~ 

「よっ!」
そこは既に出来上がっていた。


「いや~もう、先輩来ないんじゃないかってひやひやしたっすよ」
缶ビールを危なっかしい感じで振りながら真っ赤な顔でウィルが話しかけられている。
「そりゃ、かわいい後輩たちが楽しくやってるんだ。僕だって参加する特権はあるだろう?ところであいつは?確か場所取り」
「場所取り要員は今、散歩中っすよぉ!」
他の人が答えた。
「んで、その後ろのが先輩のお子さん?いや~、前々から先輩は年齢ごまかしてるって思ってたけど、そんなに大きなお子さんがいらっしゃるなんて、、、言ってくれればよかったの!」
そう言ってオレは頭を撫でられた。
アルは言うに及ばず、既に数人の女性に囲まれていた。
「・・・僕の子どもだって誰が言ったのかな?」
静かな声でウィルはその場にいた人々に聞く。
「そら、先輩の従兄弟殿だな!」
わっはっは
その言葉が出てきた途端にその場にいたみんなが爆笑した。
「もーう、そんなところに立ってないで座って!」
女性陣から声が出る。
「もうすぐなつも来ますから」
「そういや、教授は?今日は参加されるって言ってたと思ったんだけど」
「教授は今日は家族孝行しなくてはならなくなったそうよ」
「あぁ、例のイベント?大変だねぇ。来る途中で見た。すごく子どもが電車にいっぱい乗ってて、参っちゃったよ。」
声に苦々しい。確かに大変だった。ウィルがにっこり笑って
「やっぱり今日はこのまま引き返してどこかで涼しく美味しいものを食べよう!」と何度言ったことか。
そこで引き返さないように何度オレたちが説得したことか。
ナツノがせっかく、誘ってくれたのに。でもオレたちじゃその待合場所に行くことが困難で、絶対にたどり着けないことはわかっている。
わかっているからこそ、ウィルの機嫌を損ねないように説得するのはとても、とても、大変だった。まぁ、それは弟であるアルがやってくれて実はオレ自身はあまり苦労していないのだが。
「・・・先輩、その顔。やっぱりなつの言ってた通りだわ。」
どうも、ナツノはそんなウィルのことをわかっていて何か愚痴をこぼしていたのだろう。
「なんのことかなぁ?ミス」
大人気ないウィルはここでナツノの言動の聞き取り調査。哀れナツノ、いつかネタにされるな。
「ほほほ。なつに直接お聞きください」
そんな会話をしつつ、ウィルは座りオレたちも促されるように座った。

「先輩、研究室にも顔出してくださいよ。この頃、出てくれなくて寂しいっすよ」
先ほど、オレたちを見てウィルの子ども発言をした人がウィルに絡んだ。
「いやいや、この子たちがいるからねぇ。家を離れることができないのだよ」
だって僕の子だよ?心配で心配で。
ウィルは意趣返しのつもりか、はたまた研究室に顔を出さなくてもいい口実とばかりに思っているのかそんなことを言った。
「うわぁ、先輩。子ども認知しちゃったよー」
たはは~とウィルに絡んでいる人は苦笑した。
・・・ウィルは外でもウィルだったのか。
オレはいつもどおりのウィルを横目に弟を見た。
・・・弟は既に人に囲まれてなにやら話をしていた。
そうだよな、人懐こい顔つきしてるし、なんてったって社交的だもんな。
気づけばオレだけ一人で辺りの様子を伺っていた。
今日はなんでこんなとこに来ているのかも実はオレは知らない。
アルは前にナツノから何かを聞いていたらしい。
ウィルは今朝、ナツノから電話がきて渋々準備を始めてて。
出かける直前にオレは本から引き離されるようにして外に連れ出された。外は灼熱地獄。一歩でも車道にでれば、まるで身を焦がされているかのような錯覚に陥る。
特にオレは、ここではかなりオートメイルが目立ってしまうため長袖を脱ぐことも出来ず。まぁ、この様子だと脱いでも、オートメイルが太陽の熱を吸収してますます大変なことになってしまうだろうが。
「エド、よかった。来れたんだね」
自分の名前を後ろから呼ばれてびっくりして振り返った。
そこには自分たちを誘ったであろう張本人が立っていた。
「もしかしたら、来ないかなって思ったんだけど。来てくれて嬉しいよ。」
はにかみながら、そう言ってオレに手渡したのは結露がついている缶ジュース。
「ほら、これで冷やして。ごめんね。やっぱりきつかったよね。」
もう一本、缶ジュースをオレの頬に当てて、そしてそれをオートメイルの腕に持たせた。
「亘、来てくれてありがとう!」
ナツノは人に囲まれているウィルに向かって声をあげた。
ウィルはそこから声をあげず、手を大きく振っただけだった。
「アルも、ごめんね。急だったのに来てくれて本当にありがと」
「ううん!僕も見てみたかったから。花火。」
アルはにっこりと笑顔でそう言った。
「あら?アルくんは花火見たこと、ないの?」
「いや、見たことはあることはあるんだけど、、、」
そう言って、また女性陣から質問攻めにあっていた。
かなり、今オレに救いを求める視線を感じたがそれをオレはすっぱりと無視した。へっ人気があっていいですね、アルフォンスくん。
「エド、大丈夫?本当に大丈夫?」
「あ?あぁ、大丈夫だ。」
「・・・本当に?」
眉間に皺を寄せながら尚も食い下がってくる。
「本当だって。ただ、こんなに人がいるとは思わなかっただけだ。ところで今日はなんなんだ?」
「あー、アルからは何も」
「聞いてない。今日、急に出かけるって言われて読み途中だった本を奪われてオレはここにきた」
少し、恨めしくなってわざとそう言った。
「あははは。ごめんね」
「ほんと、何度もウィルは帰ろうって持ちかけてくるし。大変だったんだぞ」
「でも、それをなだめたのはアルでしょ?」
「・・・・」
ばれてる。
「まぁ、そんなとこだと思ってたよ。」
ふう、とため息をつきつつナツノはそう言った。
「今日はおっきな花火が上がるんだ。」
「花火?」
そういえば、アルが先ほど花火がとか言っていたな。
「そう、花火。見たことはあるでしょ?」
「あぁ。一度見たことがある。」
そう言って、あの村で見た花火を思い出した。しかし、どう考えてもその花火からこれだけの人数は連想できなかったが。
「うん。アルに一度聞いたら見たことがあるって。でも、その花火から比べたらもっとすごいんだから!」
ナツノは少し、興奮気味にそう言った。いつも思うのだが、彼はそんなところが少し、いやかなり幼いと思う。
そう言ったら、怒るだろうけど。



「・・・エド」
「ん?」
ナツノは急にオレの腕を引っ張り立ち上がらせた。
「少し、散歩に行こう。」
「へ?」
オレは半ば引きづられるように、ナツノについていく。
「なぁ、ナツノ。どこ行くんだ?オーイ!」
いくら言ってもナツノは止まらないし、腕を放そうともしなかった。
いつもなら腕を放せと言っているだろうが、それも億劫で。
ナツノの好きなように、好きな場所についていくことにした。
ただ、ナツノの手が。オレを掴んでいる手が冷たくて気持ちよかった。







続くかもしれない

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